今年の7月、新紙幣が20年ぶりに発行されました。デフレ脱却が叫ばれていましたが、最近は円安・物価高が進行しています。そんな中、筆者は『きみのお金は誰のため』(田内学著、東洋経済新報社)という本を読んで、改めてお金の意味について考えさせられました。元・証券会社員で、現在は社会的金融教育家として「お金の向こう研究所」を運営している田内氏は、単なる金もうけの話ではなく、お金自体の話を、小説という形で分かりやすく解き明かしていきます。
錬金術師と噂される初老の小柄な「ボス」が、中学生の少年と、投資銀行で働く若い女性に、お金の謎かけをします。「お金自体には価値がない」「お金で解決できる問題はない」「みんなでお金を貯めても意味がない」という3つの謎。この本によると、焼却される古い紙幣は毎年30兆円ほどだそうです。
お金の奴隷にはなりたくないと思いつつ、お金を神様のように拝んでしまう自分に気付かされました。また「お金の向こうに人がいる」「世界は贈与でできている」「もうからないと会社は存続できないが、もうけること自体を目的にしたら会社は長続きしない」という社会の仕組みを示され、はっとさせられました。
聖書にはお金に関する話が多数登場します。それだけ人間の生き方に関わるからでしょう。
「気前よく施して、なお富む人があり、正当な支払いを惜しんで、かえって乏しくなる者がある。」 (箴言 11章24節)*
という言葉が旧約聖書の中にあります。お金では解決しない事柄に気付かされます。高度資本主義社会の下、ブラックな働き方は問題ですが、新約聖書には、
『受けるより与える方が幸いである』 (使徒の働き 20章35節)*
という言葉もあります。お金という鎖から解放されるヒントが、聖書の至る所に隠されています。その宝を探しに出かけてみませんか。
*聖書 新改訳2017©2017 新日本聖書刊行会
(2024年 通巻476号)
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