昨年、「42 〜世界を変えた男〜」という映画が公開されました。この映画は、黒人初のメジャーリーガーとなった、ジャック・ロビンソンを描いた映画です。
1947年当時、アメリカではまだ黒人差別が激しく、特にメジャーリーグは白人のものとされていました。彼はブルックリン・ドジャース(現ロサンゼルス・ドジャース)の会長ブランチ・リッキーに才能を見い出され、メジャーへの道を歩み出すことになります。
予想されたとおり、メジャーで彼を待っていたものは、人々の敵意、いやがらせ、ののしりでした。チームメイトばかりか、リーグは全球団をあげてロビンソンがメジャー入りすることに反対しました。
このような状況の中で、リッキーがロビンソンに求めたのは「仕返しをしない勇気」でした。ロビンソンはイエス・キリストが教えた次の聖書の言葉を引用して彼の要求に答えます。
「わたしはあなたがたに言います。悪い者に手向かってはいけません。あなたの右の頬を打つような者には、左の頬も向けなさい。」(マタイ5:39)
ロビンソンは立派な成績を上げる一方で、敵意を向ける人々に対し、常に紳士的にふるまい、その態度はやがてチームメイトばかりでなく、相手チームの選手の態度を変え、リーグ全体、ひいては国全体に大きな影響を及ぼしていきます。
「仕返しをしない」ということは、一見すると弱さの表れのようにも思えますが、周囲の敵意の中で自分を保ち続けることは容易なことではないと思います。ロビンソンは聖書の言葉を信頼して、つらい試練に耐えました。彼の態度から大切なことを教えられます。
彼の態度が正しかったことは歴史が証明しています。ロビンソンに敬意を表し、彼の背番号「42」は、現在に至るまで、ドジャースばかりではなく、メジャーリーグ全球団の永久欠番になっています。
(2014年 通巻175号)
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