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「夕暮れ時に光がある」


 「思い出に残る夕焼けを教えてください。」と言われたら、誰でも一つや二つあるのではないでしょうか。天才とも呼ばれた画家たちは、それを見事な絵画に残しています。

 フランスの画家ミレーの絵に「晩鐘」という有名な絵があります。1日の労働を終えて夕焼けに染まる空の下、夫婦が祈りをささげている絵です。オルセー美術館にあるこの絵は、門外不出とされているそうです。同じミレーの絵で「種まく人」が山梨県立美術館にあります。

 2年前にこの美術館に行ったことがあります。この絵も美しい夕焼けをバックに力強く大地を踏みしめ、種をまいている絵です。幼い頃見た父の働く様子を思い出しながらこの絵を描いたと言われています。聖書に出てくる「種まく人のたとえ」がこの絵のテーマになっていると言われています。ゴッホもこの絵を模写しています。

 山梨県立美術館が開館するにあたり、目玉となる絵を探していたところ、この「種まく人」の絵がオークションに出されることを知り、高額のゆえに市民の賛否両論の意見がある中、決断して購入した事を伺いました。今ではこの絵を見るために、日本各地から、また世界中から、人々が集っています。

 美術館のパンフレットによると、いつかこの「種まく人」と「晩鐘」と「落穂拾い」の3点の絵を同時に展示することが夢であると書かれていました。「落穂拾い」とは、刈り取りの終わった畑に落ちている穂を一粒一粒拾っていく作業のことで、このつらい労働の場面をとりあげたミレーは、聖書の中のルツ記の物語を念頭にしていたことはまちがいありません。この絵も淡い夕空をバックに描かれています。

 いずれの絵もミレーの深い信仰心から生まれた絵です。

 私達も美しい夕焼けに心癒されたことはありませんか。美しいものを美しいと感じる心は、それだけで大きな恵みがあると思います。


「夕暮れ時に光がある」   ゼカリヤ書14章7節


#(2019年 通巻346号)

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