昨年のNHK大河ドラマは「軍師官兵衛」でした。これまであまり日の当らなかった、黒田官兵衛という人物を描いた作品です。戦国時代の物語はそれなりに知っているつもりでしたが、歴史人物は視点が変わるとこうも印象が変わるものかと思いました。
下剋上の戦国時代にあって、豊臣秀吉はサクセス・ストーリーの典型です。しかし今回のドラマでは、権力を手にしてからの秀吉の暴走ぶりが、とても印象的でした。その暴走をいさめる官兵衛は、ライバルの陰謀から逆に秀吉の怒りを買い、切腹の危機に直面してしまいます。仕事での上司と部下の関係を思い出し、人間関係の難しさを思いました。また播磨(現・兵庫県)から九州への国替えを命じられ、赴任先で地元の国主と対立して苦悩する姿は、現代の転勤族の苦労に重なりました。
官兵衛は21歳で結婚し、生涯、側室を置きませんでした。好色の秀吉と対照的です。1583年38歳でキリスト教の洗礼を受け、キリシタン大名になります。その前に官兵衛は、主君の裏切りに会い、1年近く敵の城に幽閉されるという体験をしています。劣悪な環境で、皮膚病が全身を覆い、膝は曲がったままになってしまいました。そんな中、格子越しに見上げる牢のひさしに藤の芽が成長し、花をつける姿に、励まされたと言います。試練の時に、人は神に出会う可能性があるのです。
聖書には「あなたがたの会った試練はみな人の知らないものではありません。神は真実な方ですから、あなたがたを、耐えられないほどの試練に会わせることはなさいません。むしろ、耐えられるように、試練とともに脱出の道も備えてくださいます。」(コリント人の手紙第一10章13節)という箇所があります。日本の戦国時代に、試練とともに脱出の道も備えられ、生き抜いた人物がいました。この混沌とする現代においても、私たちは様々な試練に直面します。そんな中で確かな指標である聖書を開いて、真実な神様に思い煩いをゆだねてみてはいかがでしょうか。
(2015年 通巻187号)
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