まず、聖書の箴言20章5節を紹介したいと思います。「人の心にあるはかりごとは深い水、英知のある人はこれを汲み出す。」
ある部下との出来事があって、この箴言を考えることになりました。その部下は普段は協力的で、彼とのコミュニケーションはスムーズだと私は思っていました。しかし、ある日、彼と話すと、彼は団体の方針を無視しようとしていることが分かりました。その会話で、彼がそのことを直接伝えたのではなく、ポロリと本音をもらしたのです。会話の本題に集中していた私は、その場では方針のことに関して触れませんでしたが、後で、やはり対処しないといけないと思い、メールを送りました。部下がその方針をちゃんと理解していないと思ったので、方針を明確にするメールを送り、それで解決されたと思いました。
しかし、数週間後、他の同僚との会話で、その部下は引き続き方針を無視し、自分の好きなようにしようとしていることが分かりました。「おかしいな」と思い、その部下とその方針について直接話すことにしました。話すと、色々不平不満があり、それが今、毎日の仕事に影響していなくても、解決されないままだと大きな問題を引き起こす可能性があると分かりました。そのため今対処しているところですが、この出来事を振り返って、反省している点があります。それは特に、このような少し危機的な問題になる前にそれを把握し、解決出来る可能性はなかっただろうか、ということです。
部下の表面的な「問題がない」面と、内面的な「大きな不平不満がある」面を考えると、上記の箴言のように、人の心にあることは本当に深い水のように感じます。それを理解するには「英知」が必要だと書いてありますが、この場合に特に必要だったのは心を知るまで聞くということでした。振り返ってみるとその部下が方針を無視しようとしていることをポロリと本音をもらした理由は、自分の不平不満を表すためでした。彼は普段は協力的な人なので、直接文句を言うのが難しかったのでしょう。私が部下の最初の話にきちんと耳を傾けていたら、部下の心にある悩みを知ることができ、問題がもっと早い段階で解決されたのではないかと思います。皆様も相手の心を知るまで聞いてみてはいかがでしょうか。
(2014年 通巻165号)
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