STAP細胞の問題をめぐり、理化学研究所の笹井芳樹氏が自ら命を絶ったことは、日本中のみならず世界にも衝撃を与えました。この問題での精神的な圧迫が原因とされています。
私はこの報道に接し、イエス様の言葉を思い出していました。「あなたがたのうちで罪のない者が、最初に彼女に石を投げなさい」(ヨハネ8:9)
この言葉は、姦淫の罪を犯した女が、現場で捕らえられ、イエス様のところに引きずり出されてきたときに、イエス様が人々に話された言葉です。当時、姦淫の罪は石打ちの刑(死刑)とされていました。
人々はこの女を石打ちの刑にすべきだとイエス様に迫りました。しかし、先ほどの言葉を聞いた人々は一人去り、二人去り、とうとう誰もいなくなってしまったのです。
私たちは何か事件が起こる度に、人を責める気持ちにかられます。今回の笹井氏も、関係者たちから部下に対する管理責任を厳しく問われていたとの報道が流れています。笹井氏を責めたと思われる人々、そしてこの報道に接する一人一人はいかかでしょうか。果たして私たちのうち、だれが、自分こそ完全な者であるかのような態度で、他人を厳しく責めることができるのでしょうか。
聖書では、間違ったことをしている人を責めることを否定していません。ただし、聖書は誰もが失敗を犯す者であることを前提にしています。相手のことを思って責めること、自分にも問題があることを踏まえて謙遜に相手に接するという態度が求められます。
今回の理化学研究所のことばかりではなく、私たちの周囲で数多く起きている悲劇を少しでも少なくするためには、聖書が教えているこの謙遜な態度が必要だと思います。自分を除いて相手を責めることから、自分自身の中にも悲劇を生み出す原因があることに気づくことに、問題解決の糸口があるのではないかと思います。
(2014年 通巻158号)
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