学生時代、筆者は高専で土木を専攻し、人について学ぶよりも人が生活するために必要な社会基盤、特に道路や橋などの構造物の造り方について学んでいました。「人の生活のために!」といった格好いい動機で学んでいたのではなく、授業も教えられることをひたすら暗記するという機械的な学生生活でした。それでも、構造物が造られるまでの過程を学びながら、目に見える町には様々な目的と機能が備わっていることを知り、外を見る目が変わっていくのを実感しました。人々が安心して暮らせる社会の形成のためにこの学びがある。浅はかな者でしたが、少しずつその視点が養われていったのです。
今は全く異なる働きをしていますが、当時の学びのことは今でも記憶に残っています。そしてその中でも、土木者倫理を学んでいた時に先生が語られた一言は特に印象に残っています。
「ですから、人からしてもらいたいことは何でも、あなたがたも同じように人にしなさい。」 (マタイの福音書7章12節)
その先生はクリスチャンではありませんでしたが、上記の聖書の一節を引用し、「これがゴールデンルールです」と土木者が現場に出る上で必要な心構えとして教えて下さいました。
人からしてもらいたくないことは、あなたもするなという話はよく耳にします。しかしイエス・キリストは、これをむしろ積極的な生き方として教えられました。自分がされたら嬉しいこと、してもらいたいことを同じように相手にする。待っているのではなく、自分から行動する。この生き方こそ、聖書が教える「人の道」だと教えられたのです。
モノ造りを担う者は、直接的に人と関わることが少なかったりもします。しかし、造ったモノを利用する人がいるという視点は欠かせません。また、この教えは土木者に限った話でもありません。どの職種であれ、自分がされたら嬉しいことを相手にもする。その心で仕事に向かえば、その職場における人間関係・環境はこれまでとはまた一段と変わるでしょう。
聖書の教えは、時代を超えて現代にも語り継がれています。ゴールデンルールとして知られるこの生き方を、他でもないイエス・キリストは実践されました。あなたの職場にも変革をもたらすこの生き方を、まず聖書から学んでみませんか。
(2022年 通巻431号)
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