「私が言っていることが正しいのに、あの頑固な上司は聞いてくれない」という経験をされたことがないでしょうか。「誰々さんを説得したいけど、どうすればいいか分からない」という経験があるかも知れません。その場合どうすればよいでしょうか。
18世紀のイギリスの政治家であったウィリアム・ウィルバーフォースのことを紹介させていただきます。当時のイギリスは世界中に植民地をもっていました。アフリカの国々から奴隷として人を捕まえてきて、植民地で働かせ、奴隷貿易もしていました。多くの利益を生む商売でしたが、人の自由を奪い、虐待や虐殺も多く、非常に恐ろしい商売でした。イギリスだけではなく、他にも多くの国が関わっていました。
熱心なクリスチャンであったウィルバーフォースは奴隷貿易に大反対し、神様からの使命と感じて、1787年に奴隷廃止運動のリーダーを引き受けました。現代の私達にとっては奴隷廃止は当然なこととして考えますが、当時はそうではありませんでした。「イギリスの経済に大切な貿易なので、仕方ない」と考えた人もいましたし、「奴隷になった黒人は幸せだ」と現実を無視した意見を述べた人もいました。
初めにウィルバーフォースと彼の同僚は奴隷貿易に関する事実を詳しく調べました。その調査結果に基づき、雄弁な演説家であるウィルバーフォースは1789年に国会で奴隷貿易の廃止について初めて演説し、1791年には、奴隷貿易廃止の法案を提案しましたが可決されませんでした。長く続く議会での運動の始まりでした。反対や敵対の中でも彼はあきらめず、16年後の1807年に奴隷貿易廃止の法案が可決されました。
そのときに、とても不思議な出来事がありました。喜びの涙を流しているウィルバーフォースは議員から総立ちの拍手喝采を受けました。(ウィルバーフォースの話をもっと知りたい方には「アメイジング・グレイス」という映画(www.amazing-movie.jp)をお勧めします。)
聖書には「忍耐強く説けば、首領も納得する。柔らかな舌は骨を砕く。」(箴言25:15)とあります。ウィルバーフォースはこの言葉を実践したと言えるでしょう。上手に説得するには、事実に基づいて、優しい言葉を語り、忍耐を持つ必要があると教えられます。
(2011年 通巻 27号)
Commentaires