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白髪になっても

第158回芥川賞は、若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」に決まりました。若竹さんは岩手県遠野市のご出身、55歳から小説講座に通い初め、8年の時を経てこの小説を発表し、史上最年長となる63歳で受賞されました。


タイトルの「おらおらでひとりいぐも」は作品の中には言及されていませんが、同郷の詩人宮沢賢治の、愛する妹とし子の死を詠んだ詩「永訣の朝」の一節を思い起こさせます。若くして死の床についたとし子が、兄賢治や両親の大きな愛に包まれながらなお、死ぬ時はひとりで行きます、と静かな覚悟を告げることばが、そこだけローマ字で“Ora Orade Shitori egumo”と、美しい東北のことばの音感が伝わるように書かれています。


小説「おらおらでひとりいぐも」の主人公は、15年前に愛する夫に先立たれた74歳の桃子さん。息子とは疎遠になり、近くに住む娘ともしっくりこない。「人は独りで生きていくのが基本」と思って生きています。ひとり暮らしの桃子さんですが、母親との確執や懐かしい祖母のこと、心筋梗塞であっけなくこの世を去った夫のことなど、自分の来し方を思い巡らすとき、その心の中にたくさんの声が、しかも東北弁の声が沸き上がります。それは「おらだば、おめだ。おめだば、おらだ。」というように、桃子さん自身の声であり、桃子さんはその声に耳を傾けながら思考を練り上げ、「孤独などなんということもないと自分に言い聞かせもし、十分に飼いならし、自在に操れると自負し」ています。しかし、時にその孤独が暴れだし、「さみしいじゃい、おらはさみしいじゃい」という声がのど元から突き上げるのを感じるのです。


今、日本では老若問わず独り暮らしの世帯数が増加傾向にあると言われ、悲しいことに「孤独死」が珍しいことではなくなっています。若竹さんのこの小説はそのような時代を切り取り、心の中の声を十分に、しかも美しくリズミカルな東北弁で表現して多くの人の心をとらえているようです。

ところで、桃子さんは自分の心の中の声に耳を傾けていますが、私たちは、私たちの外から話しかけてくださる神様の声に耳を傾けることができます。神さまは被造物(自然界)を通し、また神さまのことばである聖書を通して、私たちに絶えず語りかけておられます。「胎内にいたときから担がれ、生まれる前から運ばれた者よ」(イザヤ46章3節)と私たちに呼びかけ、「あなたがたが年をとっても、わたしは同じようにする。あなたがたが白髪になっても、わたしは背負う。(同4節)」と語りかけてくださるのです。


このお方のことをよく知るために、どうぞあなたも聖書を手に取って読んでみてください。そして、聖書のことばが語られるキリスト教会を訪ねてみてください。


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